SNS発信が気まぐれで続かない作り手の方へ。原因は写真からスタートしているからです。「言葉(コンセプト)→ テーマ → 写真」の順に設計し直し、まとめて作って予約投稿に回す運用の組み立て方を整理します。
「投稿、止まっちゃってるんですよね」というよくある問い
自分のブランドで商品を直接届けたい、という作り手の方と話していると、たいてい同じ場所で詰まっています。アカウントは作った。最初の何投稿かは上げた。でもそこから、思い出したときにたまに上げるだけになって、気づけば前回からずいぶん間が空いている。
「投稿、止まっちゃってるんですよね」と、少し気まずそうに言われることが多いです。
たとえば、会社勤めから転身して自家焙煎のコーヒー豆を売っている方がいたとします。卸を通さず、カフェや個人に自分の焙煎所の名前で直接届けたい。豆へのこだわりは人一倍ある。でも発信はほぼ止まっている。理由を聞くと、こう返ってきます。
「写真を撮るのが、そもそも習慣になっていなくて」
私はこの言葉が出てくると、だいたい原因が見えたと感じます。続かない理由は、ネタがないからでも、センスがないからでもありません。スタート地点が写真になっているからです。
写真からスタートするから、面倒くさくなって止まる
発信を「写真を撮ること」から始めると、毎回が重くなります。
何を撮ろうか考える。撮る。気に入らなくて撮り直す。加工する。それらしいキャプションをひねり出す。この一連を毎回ゼロから繰り返していたら、それは続きません。仕事の合間に、思いつきでやる作業として一番続かない形です。
しかも厄介なのは、こうやって撮った一枚一枚に、つながりがないことです。今日は豆の写真、次は気が向いて店内、その次はまた間が空いて……となると、見ている側からは「結局この人は何の人なのか」が伝わりません。投稿はあるのに、何も伝わっていない状態です。
私はよく、こうお伝えします。情報発信は写真じゃありません。言葉です。何を発信するかという言葉を先に決めて、それから写真を用意する。順番が逆なんです、と。
まず決めるのは「自分は何の作り手か」という一言
では何から始めるか。写真ではなく、コンセプトを一言で決めることからです。
私はよく、こんな喩えを使います。かりに「吉岡家」という店があったとして、看板に「吉岡家」とだけ書いてあっても、何屋なのか分かりません。通りすがりの人はフォローしようとも思いません。でも「希少部位だけを使ったカツ丼屋」と一言で言い切ってあれば、「ちょっと見てみたい」になります。
この一言が、コンセプトです。
これは私が相談でよく使う、Who(フー)→ What(ワット)→ How(ハウ)という考え方の入り口でもあります。Who(フー)は「誰に届けたいか」、What(ワット)は「その人にどんな価値を提供できるか、そしてそれを裏づける具体や根拠は何か」、How(ハウ)は「Whatを提供できると信じてもらうための理由・考え・視点」です。Howは技法やサービス内容ではなく、「自分はこういう点を大切にしている」という見せ方の軸だと考えてください。コンセプトとは、この三つを一言に凝縮したものだと考えています。
先ほどのコーヒー焙煎家でいえば、「毎日、誰よりもコーヒーを淹れている人間がつくる豆」のような一言です。資格や技術を前面に出すのではなく、「誰のために、何を、なぜやっているのか」が一言で伝わる。これが決まると、ようやく写真が意味を持ち始めます。
SNSは「集客」の入り口。一言で言い切れないと機能しない
ここで、私が相談でよく使う集客の全体図を当てはめてみます。
集客 → 接客 → 回収、という三段です。
- 集客(知ってもらう): SNS・広告・チラシ。存在を知ってもらう入り口
- 接客(その気になってもらう): ホームページ・プロフィール欄。「この人に頼んでいいか」を判断してもらう場所
- 回収(アクションを回収する): フォーム・予約・カート。行動に踏み切ってもらう仕組み
SNSは、この一番手前の集客にあたります。ただし、SNSは情報量も文字数も限られた場所です。長い説明は読まれません。だからこそ、「何の作り手か」を一言で言い切れないと、集客として機能しないんです。
気まぐれに写真を上げているだけの状態は、入り口に立っているのに看板を出していないのと同じです。プロフィール欄やホームページは接客の役割を担いますが、そこに来てもらうための入り口が機能していなければ、その先には進みません。
コンセプトを「3つくらいのテーマ」にぶら下げる
一言のコンセプトが決まったら、次はそれを支えるテーマを3つくらい決めます。
またカツ丼屋の喩えで言うと、商品(豚・カツ丼そのもの)、お店の雰囲気、人(スタッフ)という3つのテーマで投稿を作っていく、というイメージです。コーヒー焙煎家なら、豆や味わいの話、焙煎所の日常、作り手の人柄、といった3つに置き換えられます。
なぜテーマを決めるかというと、これがあると「今日は何を撮ろう」で止まらなくなるからです。テーマという受け皿があるので、写真も言葉も、そこに流し込んでいけばいい。毎回ゼロから考える消耗がなくなります。
ここで、強みの扱いには一つだけコツがあります。専門資格や産地への通い詰めといった「すごい背景」を持っている方ほど、それを出すのをためらいます。「自慢みたいで嫌だ」と。気持ちは分かります。でも、強みは振りかざすのではなく、テーマの中にエッセンスとして混ぜればいいんです。「資格がすごい」を主役にするのではなく、「なぜそこまで詳しいのか」を語ると、それは自然と「対象への愛」の話になります。自慢ではなく、人柄として伝わります。
まとめて作って予約投稿。発信を「仕事」にする
設計ができたら、最後は運用の形を変えます。
写真からスタートして毎回その場の思いつきでやるから、続きません。だから、まとめて作るんです。
週に一度、時間を取る。テーマに沿って投稿のリストを作り、写真をまとめて用意して、言葉を添える。そして予約投稿の機能を使って、自動で上がるように仕込む。週に一度まとめて時間を取れば、十数件ぶんを予約で仕込むことも十分にできます。
こうすると、発信は「思い出したらやる趣味」から「設計された仕事」に変わります。日々やることは、上がった投稿への「いいね」やコメントへの反応、つまりコミュニケーションだけになります。
そしてもう一つ、まとめて設計して回すことの大きな利点があります。後から検証できることです。3つのテーマで投稿を続けていくと、どのテーマがよく見られているかが、ビューの数字に表れてきます。実際、同じ十数投稿でも、あるテーマは数百ビュー止まりなのに、別のテーマは数千ビューまで伸びる、というように、桁がまるごと変わることが起きます。刺さらないテーマは差し替えて、新しいテーマを足してみる。そうやって、感覚ではなく数字で改善していけます。
これから整えるなら、この順番で
もし今、発信が止まっているなら、私はこの順番をおすすめします。あくまで一つの進め方の提案として、受け取ってください。
- 自分は何の作り手か、コンセプトを一言で言い切る(Who・What・Howを一言に凝縮する)
- そのコンセプトを支えるテーマを3つくらい決める
- 強みは主役にせず、テーマの中に「なぜそこまでやるのか」として混ぜる
- 週に一度まとめて時間を取り、写真と言葉をまとめて用意する
- 予約投稿で自動で上がるように仕込み、日々はコミュニケーションに徹する
- しばらく回したら、ビューでどのテーマが刺さったかを検証し、差し替える
写真を一枚撮ることから始めるのではなく、言葉を一つ決めることから始める。たったこれだけの順番の入れ替えで、続かなかった発信が、続く運用に変わっていきます。
ハンドメイド・教室業・農産物直売でも同じ「情報発信の順番」が効く理由
これはコーヒー焙煎家に限った話ではありません。ハンドメイド作品でも、養蜂でも、教室業でも、構造は同じです。
情報発信が続かない・伸びない本当の理由は、ネタや写真が足りないからではなく、写真からスタートしているからです。順番を逆にする。まず「自分は何の作り手か」を一言で言い切り、それを支える3つくらいのテーマを決め、テーマに沿って写真と言葉をまとめて用意し、予約投稿で仕事として回す。そうすれば、気まぐれ投稿が「設計された発信」に変わり、後から「どのテーマが刺さったか」を検証して改善できます。
発信は、撮る作業ではなく、設計の作業です。
よくある質問
Q. テーマは3つでないといけませんか
3つは目安です。多すぎると主張がぼやけ、少なすぎると投稿のバリエーションが作りにくくなります。まず3つくらいで始めて、回しながら手応えを見て、足したり差し替えたりするのがおすすめです。
Q. 写真のクオリティは気にしなくていいのですか
写真が大事でないわけではありません。ただ、順番の話です。先に言葉(コンセプトとテーマ)を決めておけば、その言葉に合う写真を狙って撮れるようになります。撮ることから始めると、何のための一枚か分からないまま消耗します。言葉が先、写真は後、という順番が大事です。
Q. 自分の経歴や資格を出すのに抵抗があります
その感覚はとても自然です。だからこそ、強みは「主役」にせず、テーマの中の「なぜそこまでやるのか」という文脈で混ぜることをおすすめしています。資格や経歴そのものを誇るのではなく、それに向かう理由を語ると、自慢ではなく人柄として伝わります。
Q. 予約投稿だと「手抜き」に見えませんか
むしろ逆だと考えています。まとめて設計して仕込むからこそ、一貫性のある発信ができます。日々の時間は、上がった投稿への反応やコミュニケーションに使えます。思いつきで上げるより、設計して回すほうが、続けられて、結果として誠実な発信になります。
Q. どのくらい続ければ効果が見えますか
明確な期間を言い切ることはできません。ただ、まとめて作って回す形にすると、続けること自体のハードルが大きく下がります。続けられるからこそ、ビューの数字でテーマの手応えを見られるようになり、改善のサイクルに入っていけます。
※本記事は実際の相談現場で出会う「よくあるパターン」をもとに構成したフィクションです。
登場人物・店舗・地域・数字などの具体設定はすべて創作であり、特定の個人・事業者を指すものではありません。
本記事は、中小企業・個人事業の経営相談を行うコモンズが、実際の相談現場での知見をもとに構成・提供しています。記載の内容は一般的な考え方の整理であり、特定の成果を保証するものではありません。発信や集客の進め方は事業ごとの状況によって異なります。実際の取り組みにあたっては、ご自身の状況に合わせてご判断ください。









